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				パリのポンピドゥー・センターに行きました.
				
 いうまでもなく,レンゾ・ピアノとリチャード・ロジャースの設計による文化施設で,
 ジャン・プルーヴェが審査委員長を務めた国際コンペを経て,1977年に開館しています.
 
 構造や配管やエスカレータがむき出しになった外観は,マシン・ユートピア的デザインの
 批判的再来として,1970-80年代に展開したハイ・テック・スタイルの先鞭をつけたものですが,
 しかしこの建物は,パリの美しい街並みの中にあって,ものすごく異様な姿を晒しています.
 
 そして容易に想像できることですが,このデザインは,当時のパリ市民の中でも
 賛否両論あったようです.
 
 ところが,このむき出しになったエスカレータでポンピドゥーの最上階まで登ると,
 パリの街を,周囲の屋根のラインのやや上から見下ろす構図が得られます.
 
 これは,それまでパリにはなかった視点だと思うのですが,そこからは,
 周りの建物のむき出しになった煙突やら,汚れた妻壁ばかりが見えて,
 地上レベルからはあんなに美しく見えたパリが,とても汚らしく見えるのです.
 
 つまり,醜いはずのポンピドゥーの上から見れば,美しいはずのパリも醜く見えて,
 所詮ものの美醜なんてその程度のものだ,という非常に高度なアイロニーとして,
 この建物はデザインされているように思えます.
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